疾患と治療
けいついぜんぽうこていじゅつ
頚椎前方固定術
頚椎前方固定術は、前頚部に斜めあるいは横方向に皮膚を切開し、気管や食道などの臓器や血管などをよけながら、前方から椎間板や骨棘などの圧迫因子を除去して、脊髄や神経根の圧迫を解除する手術法です。その後、腸骨(骨盤の骨)や人工スペーサーを椎間(首の骨の間)に設置して、上下の椎体(首の骨)の固定と安定化をはかります。近年では、金属製のプレートとスクリューなどのインプラントが進歩し、手術翌日より歩行訓練が開始できるようになっています。一般的には、1~2椎間の病変に対して適応となりますが、まれに長範囲の固定を行うこともあります。前方からの圧迫因子が大きい場合(椎間板ヘルニア、後縦靭帯骨化症、腫瘍など)、不安定性(首の骨のぐらつき)が生じている場合、あるいは後弯変形(骨の並びが後ろに曲がっている)を認める場合などに適応になります。術後、隣接椎間障害という固定した上下の椎間に新たな狭窄を生じることがあるため、脊柱管が全体的に狭い患者様の場合には慎重に手術選択をする必要があります。最大の利点は、後方の筋肉組織に損傷を与えないため、術後の軸性疼痛(後頚部から肩甲部にかけての痛み)が少ないことです。その他、後縦靭帯骨化症で骨化巣が大きい場合は、有効な術式となります。 ただし、骨化巣の神経組織からの剥離は困難なことがあり、かえって神経を痛めることがあるので、骨化巣を浮上させるのみで神経症状の改善をはかる方法もあります。入院期間は、最短で約10日程度ですが、病態により異なります。術後は、頚部を固定する装具を約1~3カ月装着します。
図(左、まん中)術前MRI:首の骨の間のクッション(椎間板)が脊柱管へ飛び出し、脊髄を強く圧迫しています。
(右)術後MRI:飛び出した椎間板を摘出し、脊髄の圧迫が解除されています。
図(左)摘出した椎間板
(右)インプラントで上下の骨を固定しています