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疾患と治療

くびさがりしょうこうぐん

首下がり症候群

1992年に重度の頚椎伸筋群(首を後ろへ反らす筋肉)の機能不全を呈す一連の症候群が首下がり症候群(dropped head syndrome)と命名されました。つまり、首下がり症候群は比較的新しい疾患となります。一般に70歳代以上のご高齢の女性に多いのが特徴で、外観上は首あるいは背中が前方に折れ曲がり、頭が前方に垂れ下がる姿勢を取り、前方を見る事ができない「前方注視障害」という症状を呈します。

首下がり症候群の原因はさまざまで、原因不明の特発性、外傷性、頚椎手術後、パーキンソン病や筋委縮性側索硬化症や脳梗塞などの脳神経内科疾患、甲状腺機能低下症、うつ病、関節リウマチなどの自己免疫疾患などがあります。診断は問診、診察所見、レントゲン撮影、CT撮影、MRI撮影、血液検査などを用いて、総合的になされます。首下がり症候群の治療は、まず薬物療法、装具療法、リハビリテーションなどを実施します。ただし、リハビリテーションは脊柱起立筋、特に頚椎伸筋群の強化により、首下がりの改善をもたらす可能性がありますが、その効果は非常に限定的で、あまり期待できないとされています。実際に過去の報告でも、全患者さんのうち約5-20%程度の患者さんのみに症状の改善の効果があるとされています。しかも、その効果は一過性であり、リハビリテーションを休むと再度首下がりになってしまうと言われています。そこで石井賢医師らは受診された多くの患者さんにご協力を得て、様々な解析を行い、首下がり症候群に特異的に効果のあるリハビリテーション:short and intensive rehabilitation (SHAiR:シェア) プログラムを考案して、世界に先駆けて臨床現場に取り入れました。本プログラムは、頚部伸筋群を含む頚部・体幹筋群の筋力強化、胸腰椎の可動性(動き)獲得訓練、骨盤傾斜運動、歩行を含む運動からなり、約1-2週間実施します。これまで行われていたプログラムと比較しても、より高い有効性が示されています(図)

図(上)治療前の外観。首が自力で持ち上げられず、前が向けない状態。 (下)シェアプログラム後の外観。首がまっすぐに伸び、日常生活の支障が大幅に軽減。

一方で、リハビリテーションで十分な治療効果が得られず、栄養障害や寝たきりによる生命の危険がある場合、外科的治療を考慮します。

首下がり症候群に対する手術は一般に頚椎(前)後方固定術を行います。

現在までに石井医師の外来を受診された患者様は2023年4月時点で約450名に上り、治療を継続しています。患者様一人ひとりにあった治療が必要になりますので、まずは首下がり症候群の有無、首下がり症候群であれば何が原因かの診断を下すことが重要です。


頚椎後方固定術

首さがり症候群の病態・診断・治療・リハビリテーション (シェア プログラム)

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